古河総合公園

湿地転生の記―風景学の挑戦
予てからものすごく興味があった古河総合公園を見学するチャンスを得たので、さっそく行ってきた。
事前勉強としては、コモンズや市民の交流空間といったキーワードが挙げられる「湿地転生の記」がある。
この本は、中村先生のこれまでの古河総合公園にかける思いが綴られた奮闘記とも言うべきか、単純に読み物としても面白い内容だったし、パブリックスペースの考え方について新たな視点を提示してもらったような気がしている。なかなかオススメ。


さて、実際のところはどうだったか。

古河総合公園 管理棟 / 内藤廣
まずは視線の抜けによって、この先に広がる空間を想像させる門としての役割を持つ管理棟が出迎えてくれる。
簡素なつくりにもみえるが、屋根を真ん中で二つに分けたことで高さを抑える工夫が為されているとのこと。個人的には、太陽の光が燦々と園内に降り注いでいる様子が園内に入る前からちらりと見えていて、早く入っていきたい気分にさせられる点では成功しているのかなと思った。


小高い丘に登ると、園内を一望できる。
園内には所々、場所に名前が付けられていて、往時の雰囲気を想像しながら歩くことができる。



古河総合公園 ジェラテリア / 妹島和世
相変わらず薄さ満点の建築。どちら側にいっても、”裏”(死角)がないことで、すぐそばに寝転んだりすることができる。ガラス一枚隔てているだけの絶妙な緊張感によって、程よい距離感を得られるのが不思議かつ居心地よい空間の創出に一役買っていると感じた。


早くも子どもたちがわいわい水遊びをしていたり。
土日でもないのに、日常から遊びに来ているようだ。



天神橋 / 中村良夫
自然と人工の融合、あるいは不調和。そこを起点として歴史を感じるとともに時の流れを感じさせるため、こうした橋のデザインが出てきたのだという。



古河総合公園 春草席 / 小野寺康
園内の奥のほうへまわると幾分人は少なくなるが、展望台でありかつ四阿であるこうした空間も用意されている。
静かに佇んでいたいときは、奥まで足を伸ばしてみてもいいかもしれない。


一日じゅう歩いてみて、確かに面白くかつ楽しかった。
公園を使っている人たちの顔は明るく楽しそうであったし、市民の発案によって繰り広げられようとしている活動の萌芽もいくつか目にすることができた。
公園はイメージしていたよりもややこぢんまりとした印象を受けたが、それにしても公園の内側と外側との関係を理解するのは非常に難しいなぁと思った。また、人の流れや集まりは基本的に管理棟やジェラテリア周辺に集中するため、周囲の空間との対比が公園内外との関係のなかで二重構造のようになっていて、これから先どうなっていくのか非常に気になった。
管理運営としてはパークマスターを中心として市民の活動に委ねられている部分はあるが、より幅広く活動が生まれていけば、必ず目の行き届かないところも出てくるはずで、創り手と使い手との関係はクリアできても、使い手のなかでさらに細分化された人と人との関係性をどのようにコントロールしていくのかが問題か、と感じた。
とはいっても、こうして何かしらの形で人々が様々な関心のもと集まってくる空間というのは非常に大きな可能性を持っていて、空間の創り手としてはどこまで手を下せばいいのか、そしてどこに手を入れればいいのかということに関して大きな示唆が得られ、充実した一日だった。
惜しむらくは、中村先生にもう少し話を伺いたかったということ。