建築と広場の間


1-07 東京臨海部、台地の高さ関係 (国土地理院数値標高モデル 5mメッシュ)


東京都区部における標高は海抜5mより高い場所が黄色く示されている。
地図を見ると一目瞭然のように、西側に武蔵野台地が広がり、谷間に沿い緩やかに蛇行して幾つかの河川が東京湾に流れ込んでいる。本課題の敷地である井の頭公園は海抜45m前後で武蔵野台地上に位置するが、公園は神田川の水源ともなっている。
水の風景とはいうものの、東京では水を身体的感覚として認識できる場所が限られているように思える。



1-08 井の頭公園航空図 (Google map)


井の頭公園を取り囲む植栽は鬱蒼とした緑の環を形成し、ライブハウスや種々様々な露店などがひしめく雑多な周辺環境から隔絶された都会には貴重な閉じた空間である。我々は公園の中へと歩を進めると空の広がりをふと感じ、これまでに歩いてきた外部からのアプローチによって外部と内部との物理的隔たりと繋がりを意識することになるだろう。
そして一端公園内部に入ってしまえば、花見、太極拳、井戸端会議・・・そこは人々が思い思いに活動する開かれた公共の場となる。



1-09 思い思いに過ごす人々の空間は閉じている


しかしながらこうした公共空間での活動は、一見外に開かれているように見えて、実は彼らの中で完結した空間になっている。
例えば花見に関していえば、敷物の上に座り込んで団欒を囲むという一連の行動が、靴を脱いで家に上がることの比喩としての動作を孕んでいるように思われる。それらの集合体が意味上での街並みを形成し、多様な表情が生まれている。
個々の場が閉じているからこそ、公共の場全体を緩やかに建築言語によるエレメントで覆っていくと、閉じた空間が反転して開かれた空間、すなわち賑わいの場へと変化してゆくのではないか。このような仮説に基づき、平面的な空間の繋がりを断面的にも適用し、建築的エレメントと環境的エレメントの関係性を注意深く読み解きながら私的空間と公共的空間を繋ぐ方策を考察したい。


ひいては建築と広場の間にあるものを顕在化することで、水の風景と相互に溶け合った新たな風景の創出を目指すこととしたい。
keywordは地形と人工地盤、広場。