寿解放区

先日ようやく共同設計が終わり、展覧会で発表を済ませる。先生からもいくつか興味深い講評を頂く。
進めてきた方向が正しいのかは議論の余地が大いにある。特に、建築であること、建築ではないことの境目がつかなくなっている、つまり一人の設計者としてどこまで手を下すことができるのか、について。
しかしながら、自分たちの言いたかったことは少なからず伝わったようで、それに関しては良かったと言えると思う。


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3-02 寿の夜

3-03 簡易宿泊所の均質な空間
横浜市寿町。簡易宿泊所に押し込められてきた人たちが路上にあふれ、勝手に生活を始めてしまうとしたら、どうなるか。こんなことが現実にもあるかもしれない。



3-04 perspective
何故、こんなことになるのか。
寿には、今なお120軒以上の宿泊所が存在すると言われるが、その特質としては一室3畳程度(約5㎡)で、同じような間取り、同じような設備、同じような狭小生活空間、とファサードにその”均質な空間の連続性”が色濃く顕在化している。
しかしながら、本来人間的な営みや、人と人同士の関わり合いは、非均質な空間構成を持つものであり、その距離感や間合いも自由であるべきだ。実際、寿には日常からある意味祭り的な空間の使われ方、店先からテントを伸ばし、椅子やテーブルを置いて談笑する姿、何をするでもなく歩き回っている人たちが多くいる。



3-05 寿の社会状況

3-06 最小限居住装置の分解
そこで我々は、Micropolisという課題テーマに則り、3人で8㎡という最小限居住装置を、一人がすっぽり収まる910×910×2100の人間尺度的空間の原型まで分解し、それの集合によってできる、ひとつの集落体としての風景を表現しようとした。



3-07 unit section detail, plan

3-08 combination of the plural units
提案の骨子は、H型鋼にL型アングルをボルト締めした簡素なフレームと、取り外し・開閉可能な、かつ多様なバリエーションを持つ機能を入れ込んだパネルの組み合わせによって構成するシステムの提案である。それ以後は我々が直接手を下すわけではなく、彼ら自身の思い思いの配置、パネルの開き方や組み合わせによって、人間的な生活を再び取り戻していく。
このシステムは、1つのユニットをある意味で擬人化し、人と人との間に生まれる微妙な距離感や間合い、空気を映す鏡にもなる。パネルを開いて向かい合うように、あるいはユニット同士をつなげて寄り添うように、はたまた、背を向けて距離を置くように・・・。



3-09 plan

3-10 N-elevation

3-11 S-elevation

3-12 perspective
都市の均質化という異質な現象に対し、非均質で一見無秩序なものを挿入することで、ある秩序を生み出せるかもしれない。
そして、非建築的なものの中に、果たして建築的なものはあるのか、建築に出来ることは何なのか、その意味を再考することになるだろう。